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分断化した熱帯景観を渡った種子:実際の種子散布距離を推定する [原著]

Ismail et al. (2017) Evaluating realized seed dispersal across fragmented tropical landscapes: a two-fold approach using parentage analysis and the neighbourhood model. New Phytologist DOI: 10.1111/nph.14427.

種子散布の研究で実際にどのくらいの距離、種子が運ばれているのかをしらべるには、遺伝情報を用いて親木と実生の親子関係を徹底的にしらべるというのが一つのやり方。しかし、潜在的な親候補を広範囲にわたって網羅的に調べるのは至難の業。特にサイチョウ類のような大型鳥類は行動圏が広く、追跡調査が難しいことから、その種子散布距離は移動パターンと体内滞留時間から間接的に推定されてきた。しかし、これらの情報はあくまで潜在的な種子散布距離の指標に過ぎず、何らかの形で実測値と比べる必要がある。

このチームではインド西部で主にサイチョウ類やミカドバトなどの大型の果実食鳥類によって種子散布されるセンダン科Dysoxylum malabaricumを対象として、216平方キロの35カ所の森林パッチの親個体を全てサンプリングし、それらの遺伝情報を利用して、実生488個体の親子解析を行い、実現している種子散布距離を推定している。森林の分断化が種子散布過程に及ぼす影響に注目しているが、そのスケールが先行研究よりもずっと広い範囲である点がユニーク。

この調査地では、結実木での直接観察は行ってはいないが、Dysoxylum malabaricumはニシインドコサイチョウOcyceros griseusによって種子散布されている。別のグループによる先行研究では結実木での観察が行われており、ニシインドコサイチョウが主な訪問者で、ミカドバト類は少ない。ニシインドコサイチョウの吐き戻し時間は短く10分程度で、吐き戻された種子にも発芽能力があることが確認されている(92%と100%)。ただ、種皮がついたままの種子の発芽率が10%(n=5とn=2)と書かれているのが謎?まあ、サイチョウ類が吐き戻した種子は基本、発芽能力があることは間違いない。ただ、種皮がついた種子は林床に落下したら、アリが種皮を食べると思うけど。

調査地内に68か所の20x20m調査区を設置し、結実木周辺の23調査区内で計313個体、ランダムに設置した調査区で175個体の実生からサンプリングをしている。実生はGPSで5mの誤差で位置を記録している。Paretage analysisとNeighbourhood modelの二つの方法で種子散布距離の推定を行っている。488個体のうち、高い確率で両親が確定したのが321個体、片方が79個体。両親が確定した321個体のうち、267個体は両親と実生が同一のパッチ内、53個体は片親が別のパッチ内、1個体は両親と実生がすべて別のパッチに由来していた。

過去の研究例と比べるとニシインドコサイチョウの実際の種子散布距離は随分と短いと考察しているけど、先行研究で扱っているサイチョウ類はもっと大型なので、必ずしも種子散布距離が過大評価されているわけではないのではなかろうか。ただ、サイチョウ類が種子散布に絡む植物を対象として、遺伝情報を活用して種子散布距離を推定した貴重な研究であることは間違いない。
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