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クマが山に登ると…種子を垂直移動させることで温暖化の影響を緩和する [原著]

Naoe et al. (2016) Mountain-climbing bears protect cherry species from global warming through vertical seed dispersal. Current Biology 26: R315-R316.

種子の酸素同位体比を利用して、ツキノワグマとホンドテンの被食散布によるカスミザクラPrunus verecundaの垂直移動を示した研究。温暖化にともなう植物の分布パターンの変化は、植物の生育適地の温度や降水量など、生理的な側面から推定されていることが多いが、実際に植物が生育適地にまで移動できるかどうかは別問題。この研究では、ツキノワグマやホンドテンの種子散布により、一部の植物が山に登ることで、ある程度、温暖化に対応できる可能性を示している。

まず異なる標高帯で結実しているカスミザクラから種子を採集し、酸素同位体比と標高に負の相関が見られることを示している。次にさまざまな標高帯で回収した糞とその糞に含まれていた種子の酸素同位体比から推定された母樹の標高から、種子の垂直移動距離を推定している。酸素同位体比から推定された種子の垂直移動はツキノワグマで2度、ホンドテンで1.3度の温度低下に相当し、かなり温暖化の影響を緩和する効果がありそう。

日本のツキノワグマによる種子散布は、農工大の小池さんを中心に過去10年くらいに非常に研究が進展した種子システムの一つ。しかし、行動圏の広い大型動物ゆえにそれらの種子の長距離移動の実態を評価するのはまだまだ難しい。遺伝情報を利用することで、親子関係から種子散布距離を直接評価することもできるが、行動圏が広い動物を対象として、網羅的に対象植物をサンプリングすることは現実的ではない。この論文で開発した手法であれば、これまで見過ごされてきた垂直移動の実態をより簡便に評価できる可能性がある点で汎用性が高そう。

図1つと2ページの本文だけ読むと伝わらないのだけど、2010年から2013年の6-7月の限られた期間とはいえ、10日に一度、幅広い標高帯で糞を拾い集めるという、かなり力技の仕事。欲を言えば、もう一年早く受理されていれば、FSD2015で存分に宣伝できたのにと思わなくもない。ただ、FSD2020のfacebookサイトはすでに運営されているので、そちらに投稿してもらえば、宣伝になると思います。あとグラフで使われているホンドテンのシルエットが、もうちょっとテンらしいともっと良かった(笑)。

Current Biologyに日本発の種子散布ネタの論文が掲載されるとはめでたい。

森林総研のプレスリリースにより詳細な内容が書かれています(4/28追記)
http://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2016/20160427-01/index.html
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